2015年5月17日日曜日

それでもヘッジしたい

■それでもヘッジしたい
 本稿は「リスクヘッジは必要か」の続きになります。

 前回の記事では、「機関投資家は2次元の美少女を追い求めているのでは?」という疑惑が持ち上がりました。もしそれが事実であれば、日頃距離を感じがちな彼らをぐっと身近に感じることができます。しかし、それでは説明がつかないことがありますので、もう少し彼らのやっていることをよく考えてみましょう。
 前回の記事では、単純な値動きだけを見た場合「ヘッジは無駄」というような話になりかねませんでした。今回は見方を変えて、値動きだけではなく、その背後にある「リスク」と「要因」について考えてみます。

 さしあたって結論としましては、「機関投資家は取りたいリスクしか取らない、ヘッジはそのための道具」という話になりますので、記事を読むか、それとも一杯のコーヒーを優先されるかをご判断下さい。



■リスクの細分化
 さて、今回は「リスク」と「要因」がテーマとなります。「リスク」というと、「買った株が下がったらどうしよう」「特損500億を出しやがった!」といったマイナスのイメージが強いかと思われます。しかし実際のところリスクというのは、「自分ではコントロールできないもの」を示すものになりますので、例えば「今日から新サービス始めます」というのもリスクの1つになります。
 「良いことならリスクじゃないでしょ?」と思われる方は、自分がショートしている銘柄で同じことが起きた場合をイメージして頂ければと思います。同じ内容でも、立場が違えば意味が変わりますね。

 さて、リスクと一口にいっても色々ありますが、大きく分けると以下のようになります。この辺は金融工学の本とかでも書かれていますが、要は市場全体が動くリスクと、個別銘柄が動くリスクがあるということです。

   リスク=市場リスク+個別リスク

 とはいえ、これだけでは少々大雑把ですね。個別リスクの方に関して言えばもう少し細かくできそうです。というわけで、リスクを分割してそれを生み出す「要因」にしてみましょう。...いまいち細かくないですが、やり過ぎても仕方ないのでこの辺で留めておきます(´・ω・`)
 
  リスク=市場要因+業界要因+会社固有の要因+需給要因+その他

  市場要因:市場全体を動かす何か、日経平均とかを上下させるので皆が共通する
  業界要因:その会社が営む事業や業界に基づく、同じ事業・業界なら共通する
  会社固有の要因:その会社にしか存在しない、他のどことも共通しない
  需給要因:その会社の株特有の需給、他のどことも共通しない
  その他:色々、上記以外にも考えられる要因、今回は省略

 今回は簡略化のためはしょってますが、これ以外にもたくさんの要因が考えられますので、気になる方は考えてみてください。
 さて、いくつかの要因に分けてみたところ、1つ特徴が出てきたのが分かります。それは「その要因が他と共通するかどうか」という点です。例えば、「市場要因」は全銘柄共通ですが、「会社固有の要因」はその会社にしか存在しませんので、他社がどうあれ影響されることはありません。この点が実は重要で、「他と共通する」=「足したり引いたりできちゃう!?Σ(゚Д゚)」ということに繋がります。
 
 「リスク」または「要因」に関しては、私達がコントロールすることはできません。例えば、もし「市場要因」をコントロールできるのであれば、日経が上がる日に日経先物を全力ロングすれば、誰でもお金持ちになれます。
 このコントロールできないファッキンな要素に罵詈雑言を浴びせるのは簡単ですが、ここは文明人らしく理性的に対処する方法を考えてみましょう。つまり、コントロールできないのであれば、発生しても影響を0にしておくような保険を事前にかけておくということです。



■リスクテイカー(部分的)
 さて、リスクについて考えてみたところ、機関投資家が何をやっているのか、ぼんやりとイメージが出来てきました。つまり、彼らが「ヘッジ」しているのは「値動き」ではなく、「リスク」並びに「要因」ではないかという話です。これであれば、彼らが常にヘッジを入れることに説明がつきますし、彼らが安易に理想の美少女を追い求める夢追い人ではないということになります。では、彼らは何をヘッジしているのでしょうか?

 私達が株をロングする時、通常何らかの理由があってその株をロングします。例えば「この会社の製品は競争力があり、他社よりも大きな成長が望める」といった感じですね。この時、私達がその株をロングする理由は「製品の競争力」になります。言い換えると、日経が上下しようが、この会社の業界がどうなろうがどうでもよく、「同業他社よりもこの会社の製品が優れている」という点に対して私達はお金を投じていることになります。
 私達は必要な部分にだけお金を投じたいわけですから、それ以外の理由で株価が動くのは歓迎しません。日経平均が上下すれば当然買っている株も上下しますが、今回のケースであればその上下は不必要な要素となります。
 
 ここで上記の「足したり引いたりできる」という部分を引っ張ってくるとどうなるでしょうか。不必要でコントロール出来ない要素が存在するなら、事前にこの要素を排除することで枕を高くして眠ることができます。神様に祈るよりも建設的ですね( ・∀・)
 今回の例で言えば、「市場要因」は不必要ですから、日経平均先物をショートすることでこの要因の影響を「ヘッジ」することができます。また、「業界要因」も必要ありませんから、同業他社の個別銘柄のショートを追加して「ヘッジ」するもいいでしょう。そうすることで、最終的には「同業他社よりもこの会社の製品が優れている」という点だけにお金を投じることができます。
 言い換えると、「ヘッジする」という行為は「取りたくないリスクを取り除く手段」であって、「株価が下落した時の保険」とは異なるということになります。これが上手くいった時に「銘柄間の相関のねじれ」が発生します。機関投資家は都合のいい2次元の美少女を探していたのではなく、美少女を創りだしていたということになりますね。アッカシトル!(゚Д゚)

 ただし、ここで1つ問題があります。それは、「共通しない要因」は「ヘッジ」できないという点です。「足したり引いたりする」ためには、それが両方共に存在している必要がありますが、「会社固有の要因」等は「共通して」おらず「引くこと」ができないため、常に残り続けることになります。従って、ヘッジとは万能ではなく、ヘッジできるものとできないものが存在するということになります。
 

■ヘッジ≠高いパフォーマンス
 つらつらと並べてみたところ、機関投資家の行うヘッジとは「ぼちぼち日経が下がりそうだから先物ショートするわ(^o^)」というものではなく、「投資に不必要なものを排除する手段」という感じになってきました。しかし、このヘッジというのは万能の手段というわけではなく、不都合な面が色々とあります。「ヘッジ出来ない要因」もその1つですが、他にも「ヘッジにはコストがかかる」という問題が存在します。
 例えば「市場要因」をヘッジした場合、当然ながらそこから得られたかもしれない利益も0になります。従って、何も考えずにロングだけを持った人と、ヘッジを入れた人を比べた場合、利益の最大値は通常前者の方が大きくなります。つまり、うまくいくことしか考えない場合、ヘッジとは余計な出費でしかありません。
 
 ではなぜ機関投資家がそんなことをするのかと言えば、それは彼らがうまくいかなかった場合を想定してポジションを取っているからですね。個人投資家であれば「-50%の含み損ですがガチホールドです☆(ゝω・)v」と言っても誰からも文句はでませんが、機関投資家がそんなことを言った日には即ファンド閉鎖となるでしょう。
 こういった制約のもとポジションを取った場合、損失が限定される一方で、どうしても利益も小さくなります。その結果、個人投資家勝ち組のリターン>ヘッジファンドのリターンという図式が出来上がることになります。
 
 別の記事で、ファンドは運用資産額とも戦っているという話をしましたが、この戦いの影響がリスク回避の方向に舵を切らせている面もあります。出資者からすれば、リターンは大きいけれど時々大損をぶっこくファンドよりも、ひたすら地道にじわじわ増えていくファンドの方が安心して持ち続けることができます。
 そして、それは運用資産額を増やさないと死んでしまうヘッジファンドの都合とも一致しており、結果としてリターンを減らしてでもリスクを減らす運用に繋がります。

 以上をまとめると、ヘッジするなら「自分が何に投資をしているのか」をはっきりさせる必要があり、そしてヘッジには「不必要なものを排除する」のに必要な要素をもったものを探し出す必要があります。よく考えなくてもこれがどれだけ大変なことかはご理解頂けるかと思います。
 こういった背景を考えると、前回の記事で言った「とりあえずポジ減らせ」というのがあながち馬鹿にした話ではなくなってきます。ただし、同時に都合の良い美少女の作り方(基礎)も分かりましたので、後はこれをどうやって精度よく実行していくのかというところです。

 流石に長くなりすぎたのでこの辺りで終わりとさせて頂きますが、本稿を読まれた方がヘッジを入れる際に何かしらの参考になれば幸いです。

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